仕事のはなし

組織でやりたい事を実現する為のポジショニングの難しさ

自分が所属する部署の後輩に、意欲的で自分と感覚を共有できると感じている子がいます。ここでは彼女をAさんとしておきましょう。

Aさんは、現職に役立てることもできる資格も有しているので、これからが楽しみな1人。

ある日Aさんが、彼女自身がこれから仕事でやってみたいことや熱い思いを文字に綴り、自分に読んでもらいたいと持ってきました。

そこに書かれていたことは、自分もやってみたいと思っていたことでもあり、当然のことながら綺麗ごとでもありました。

だけれども私たちが勤めている仕事は、綺麗ごとでもなんでもいいから仕事に対する「思い」が無いと、途中で方向性を見失いがちだな業務だと自分自身は思っているので、Aさんの意見を尊重し、なんとか彼女がいろいろな経験を積めるように陰ながら根回ししてみたり、フォローしたりしていました。

そんな中、今年に入りコロナが再拡大。

妊婦が感染して重症化した際の受け入れ先が無いというニュースが飛び交ったことから、妊娠中の私は当面の間、在宅勤務をさせてもらうことになりました。

その間に事件は起きました。

Aさんが指導していた後輩Bさんが立て続けにトラブルを起こしました。

Bさんは元々トラブルを起こしがちで、これまでAさんも自分も相当手を焼いていた後輩。周りの仲間たちからもBさんに対する不満が爆発し始めました。

Bさんは真面目だけれど、なぜか相手を怒らせてしまうことがあるため、どこの対応が良くなかったのか調べるために聞き取り調査を行いました。

すると、Bさんのトラブルを解決していく過程で、部署内のメンバーから突如Aさんに対する不満も出るようになったのです。

なぜ仕事熱心でトラブルを起こしたわけでもないAさんへの不満が発生してしまったのか。

一番の理由は1つ。

Aさんが仕事熱心でガンガン仕事をやっていることを、周りが良く思えなかったからです。

どういうことか。

自分たちの仕事には、元々与えられている担当業務があり、基本的にはその業務を時間内に対応するというものです。

しかし、余裕があったり、要望があれば、他の業務も対応します。

Aさんはやる気に満ち溢れた結果、どちらかというと他の新規業務を多く取り入れていたのです。

そんなAさん、案の定定時までに業務が終わりません。周りを巻き込んで仕事をすればよかったのに、1人で進めてしまった結果、残業となります。周りからしたら

何をやっているのかわからないけれど忙しそうにして、残業までしている。

昨今は、社内で残業についても厳しくなってきているため、「残業で給料稼ぎか?」とまで思われてしまっていたわけです。

正直、私からしたら、不信がっている周りのメンバーがAさんに何をやっているのか、ちゃんと話せばいいだけじゃないかと思ってしまいました。周りのみんなは迷惑がっている一方で、ある意味「うらやましい」と思っている節もあることが垣間見れたからです。

要は、コミュニケーション不足なだけだし、Aさんは部署内でそれだけのポジションを確立する前に暴走してしまったというだけの話です。

また、Aさんが元々担当していた業務内で、仕事を膨らませて残業していたのであれば、ここまでの問題にはなっていなかったのだと思います。暴走感が丸見えで、「私、やっているのよ☆」という感じも出しまくってしまったのでしょう。

Aさんは自分が取ってきた仕事なので、自分でやり遂げたい。その気持ちはすごくよくわかる。

ただし、組織に属している限り、大きく輪を乱すと理解を得られなくなってしまいます。
自分が本当にやりたいことが周ってきた時に任せてもらえなくなる。

個人的には輪を乱すくらいがちょうどいいと思って、自分は乱してきたつもりなのですが(笑)

Aさんには、

  • やりたいことがあることはとてもいいことだが、焦って強引に進めるのではなく、1つ1つ進めるように。
  • 周りは正直、Aさんが何をしているのかわからず、不信感が募っている。先輩も後輩も巻き込みなさい。
  • この部署内、また会社内で地道にポジションを形成していかないと、本当のチャンスが巡ってきた時に掴むことができないこともある

Aさんは聞き分けのいい人なので、ちゃんと理解したようです。

与えられた仕事をすべて1人でやるのではなく、例えば下調べを後輩に頼んだり、後輩に作ってもらった資料を元に提出資料を完成させたりなど、頼みようはいくらでもあるわけです。

どうやって周りを巻き込んだらいいのかは困っていたので、無理やりいきなり巻き込むのではなく、巻き込める仕事がある時にお願いすればいい。

根本的問題は、後輩たちのコミュニケーション不足と、Aさんの土台構築不足でした。

しかし、私にも責任はあります。

今までは自分がいることで、自分がAさんの盾になっていたのですが、自分がいないことで「出る杭は打たれる」ことになってしまったのです。

自分も過去に経験済みだったのに、ちょっと忘れかけていました。

同時に、良かれと思って、自分がAさんの盾になりすぎていたかもしれない。

組織の中で、程よいポジショニングを構築することは非常に難しいです。

仕事を任せてもらえたり、昇進だったりは、いかに日ごろいいポジショニングにいて信頼を得ているかにかかっていると思います。もちろん運もありますけれどね。

難しい内容ではありますが、残された時間でAさんがいいポジショニングができる環境を見出せるようにしていきたいと思いました。